10円玉とか鉄を触った後に手の匂いを嗅ぐと金属臭がしますよね?
「どうして匂うのかなぁ」と考えた人もいるかと思いますが、2006年にドイツの研究グループがこの謎に挑んでいます。
彼らは人口の汗で湿らせた手で金属の鉄や鉄Ⅱイオンを含む溶液に触れたときに発生する気体をガスクロマトグラフィーという手法で解析をしました。
その結果、アルデヒドやケトンが計測された中で、1-オクテン-3-オンと呼ばれる「マッシュルーム臭」「血液臭」「金属臭」と呼ばれる匂いを持つ分子が発生していることがわかりました。
この匂い分子はごく低濃度でも感じることができるらしく、手のひらの皮脂と鉄イオンの反応で生じた1-オクテン-3-オンや他の匂い分子が鼻に到達することで金属臭が感じられるらしいです。
論文によると、
鉄と接触する皮膚からの金属臭は、驚くべきことに人体臭の一種です。 汗ばんだ肌は鉄金属を腐食して数秒以内に鉄Ⅲイオンに酸化される反応性の鉄Ⅱイオンを生成すると同時に、皮膚に存在する皮膚脂質過酸化物を還元して金属臭として知覚される臭いカルボニル炭化水素に分解します。 この速い反応は、それが触れた直後に臭いがする「金属そのもの」であるという感覚の錯覚を作り出します。 同様の肌の金属臭のメカニズムは、日常品として使われる鉄、銅、真ちゅうにも適用されます。とのこと。
「金属臭」って体臭だったのか(^w^)
たしかに食べ物の味って味覚だけでなく嗅覚も使っているのに、舌だけで感じていると勘違いしてしまうように、金属臭も金属を触ってすぐだから金属の匂いだと錯覚をしてしまうんですね。
参考文献
・新村芳人(2018)『嗅覚はどう進化してきたか』岩波書店
面白い内容でした!書評も書きました→「二酸化炭素には匂いがある?一番匂いに敏感な動物は?『嗅覚はどう進化してきたか』を読んでみた。」
・Glindeman D, Dietrich A, Steark HJ, Kuschk P. (2006) The two odors of iron when touched or pickled:(skin) carbonyl compounds and organophosphines. Angew Chem Int Ed Engl 45:7006-7009