嫌な匂いは経験から獲得していくらしい

2018年12月6日木曜日

感情心理学 五感の科学 五感の科学:嗅覚 論文

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ある匂いが好きかどうかは、生まれつき備わっているという考え方と、経験して獲得していくという考え方があるそうです。

たとえば、生まれつき備わっているということを示す実験としては、1979年に西欧人の成人が嫌悪を示す卵やエビの匂いに対して、新生児は嫌悪の表情を示し、成人が好ましいと思うバナナ、バニラ、バター、チョコレートの匂いには快の表情を示すそうです。

経験して獲得していく例としては、1992年や1995年の生まれたての新生児は自分の接していた羊水の匂いを好んだという実験、1997年の母乳を与えることで母乳の匂いを好むようになっていくという実験や、自分の母親の汗のにおいを他の母親の汗のにおいよりも好むという1985年の実験があります。


今回は筑波大学が2003年に行った匂いの好みを経験して獲得していくということを示す実験を紹介します。



実験方法は29名の2歳前後の幼児を1人ずつ母親と2つの箱に入れます。
箱にはテレビと匂いが入っており、「アンパンマン」か「おかあさんといっしょ」が流れています。
匂いは片方の箱はβフェネチルアルコール(バラの花の香り)とスカトール(野菜屑、口臭、うんちの匂い)です。
それぞれの箱に幼児を入れて、匂いをかがせた後、テレビの続きをどちらの箱で見たいかを幼児に訪ね、その選んだ結果を観察するということを一人の幼児につき6回行いました。

その結果、6試行すべてを実施できたのは29人中19人のみだったようですが、どちらの匂いの箱が好きだったかは半々で好みの差はみられなかったそうです。


ただ、バラの花の香りの方を月齢が高い幼児は好んだり、発達年齢が高い幼児は楽しそうにしていたらしいです。
2歳前後でうんちの匂いを学習していくんですかね~。

3歳児以上になると匂いの種類によっては成人と同様の嗜好パターンを示すようになると報告する論文もあるそうです。


参考文献
・新村芳人(2018)『嗅覚はどう進化してきたか』岩波書店:67-68
書評も書きました→「二酸化炭素には匂いがある?一番匂いに敏感な動物は?『嗅覚はどう進化してきたか』を読んでみた。
・綾部早穂(2007)「匂いの快・不快」, 澁谷達明, 市川眞澄 編『匂いと香りの科学』朝倉出版
・綾部早穂ほか(2003)「2歳児のニオイの選好-バラの香りとスカトールのニオイのどちらが好き?-」『感情心理学研究』第10号第1号:25-33.

自己紹介

あっきー

大学4年間で1,000冊読了。このブログでは、心理学、生き物などのオススメ本について紹介していきます。

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