タイトルにもある通り、
・「イヌの嗅覚はヒトの1億倍」ってどこまでホントなの?
・ヒトも匂いの道をたどれる!?
という疑問に対しての答えが『嗅覚はどう進化してきたか』(新村芳人, 岩波出版)に書かれていたので、紹介します。
「イヌの嗅覚はヒトの1億倍」ってどこまでホントなの?
ネットでイヌの嗅覚について調べてみると、ヒトの100万倍とか1億倍という数字が出てきます。
これはどこまで本当なのでしょうか?
実は、1億倍という数字はある特定の匂い分子に対してのみだったそうです。
その匂い分子というのはヒトの体臭の成分の1つである酪酸。
ヒトが感知できる酪酸の濃度から1億倍に薄めたものでもイヌは感知できたことから、「イヌの嗅覚はヒトの1億倍」といわれるようになったそうです。
これは1953年のドイツの研究からきているそうです。
古いなぁ(;^_^A
また、同じ酪酸に対して、1973年の論文によれば、イヌの嗅覚の感度はヒトの100倍だとか。
全然違うやん(^w^)
イヌの種類が違ったのかもしれないですね。
他にもイヌの嗅覚を対象にした研究は行われていて、1984年の研究では酢酸アミル(バナナの匂い)は300倍、2006年の研究では同じ酢酸アミルに対して1万倍から10万倍という結果が出ています。
論文ごとにイヌの嗅覚の感度が違うのは
・イヌの種類
・イヌの年齢
・訓練の差
・ネズミのようにたくさん使えないこと
・ヒトとイヌという異なる種を比較することの難しさ
があるそうです。
また、イヌの嗅覚の感度が高いのは
・嗅神経細胞の数が多い
・嗅覚受容体の感度が高い(低い濃度でも活性化しやすい)
・イヌの鼻の構造は匂い分子を嗅上皮に届けやすくしている。
という理由があるそうです。
ヒトも匂いの道をたどれる!?
犯人の残した匂いを追跡する…イヌにしかできないことだと思っていませんか?
実は、ヒトも匂いの道をたどることができるかもしれないという実験があるのです。
イスラエルのノーム・ソーベルらの研究によると、芝生の上にチョコレートの匂いの
する道を約10m作りました。
被験者には耳栓と目隠し、手袋をして、芝生に鼻をつけ、その道を歩いてもらいました。
結果は32人の被験者のうち21人がその匂いの道を最後まで正しくたどることができたそうです。
アスファルトの道だと匂いが残りにくいなど条件が違ってきますが、ヒトも条件次第では匂いをたどって犯人を探ることができるといえそうですね。
…鼻を地面につけて這うなんて恥ずかしいですけど(;^_^A
参考文献
・新村芳人(2018)『嗅覚はどう進化してきたか』岩波書店
書評も書きました→「二酸化炭素には匂いがある?一番匂いに敏感な動物は?『嗅覚はどう進化してきたか』を読んでみた。」