細胞って電気持ってるんだって! ―初心者でもわかるといいな。な神経科学(第5回)

2019年2月2日土曜日

初心者でもわかるといいな。な神経科学

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前回は神経細胞がどのように次の神経細胞に情報を伝えていくのかをおおざっぱに紹介しました。
今回は、おおざっぱに紹介したことの一つである「膜電位ってなに?」について解説していきます。

2-2. 膜電位

ここまでの話で、活動電位や膜電位についての話が出てきました。

実は、神経細胞にかかわらず細胞は細胞の外と中を隔てている膜(細胞膜)に電気を持っています。(電気は正確には電位といった方が正確な表現です。)神経細胞はこの細胞膜にある電気をうまく活用して情報を伝えています。

では、どうして細胞膜は電気を持っているのでしょうか?


それは細胞の外と中で、イオンの濃度が異なっているからです。イオンとはNa+やCa2+、Cl-などの、文字の右上にプラスやマイナスのついたもので、電気を持っている原子のことです。

神経細胞を例にとると、神経細胞の場合、細胞内のNa+は細胞外のNa+よりも多く、K+は細胞内の方が多くなっています(図4、表1)。  
図4「カエルの神経細胞内外のイオンの濃度差」K+は細胞内の濃度が細胞外よりも大きくなっている。K+以外のイオンは細胞外の濃度が細胞内よりも大きい。 


表1「カエルの神経細胞内外のイオンの濃度」Cl-以外の濃度を示した。単位のM(モーラ)はmol/Lを省略した単位。

この細胞内外のイオン濃度の差が、細胞が電気を持つ仕組みの秘密です。そして、細胞の中よりも外の方が+の電荷が多くなっているので、細胞内は細胞外よりも低い電位を持っています。

じゃあ、細胞はどのくらいの電気を持っているのか?

ここまでの話で電位という言葉が何回か出てきました。実はこの電位という言葉がここから先の理解をするためには必須の言葉になるので押さえていきたいと思います。

電位は「ある基準となる電圧に対して、どのくらい差があるのか」を示す量です。

電位は物理の勉強でも出てきますが、細胞の電位の場合、細胞膜と呼ばれる細胞の外と中を隔てている膜に電位があるので膜電位と呼ばれています。

例えば、ある神経細胞の場合、細胞外を基準として0 mVに設定すると細胞内は細胞外よりもだいたい65 mV低い電圧を持っているので、細胞内の膜電位は-65 mVとなります。この細胞内の-65 mVのように何も外部から刺激がないときに取る値の膜電位を静止膜電位と呼ばれています。

何も刺激がない場合があるということは、刺激がある場合もあり、このとき膜電位が変わります。例えば、神経細胞の場合、前の神経細胞の軸索から樹状突起が刺激を受けるときに膜電位が変化します。

この膜電位の変化には2種類あって、静止膜電位よりも小さい値、-65 mVよりもより負の値になる場合と静止膜電位よりも大きい値、-65 mVよりも0 mVに近くなる場合があります。それぞれより負になることを過分極、0 mVに近づくことを脱分極と呼びます(図5)。
図5「膜電位の変化」ここでは静止膜電位を-65 mVと書いてありますが、神経細胞がどの生き物、どの部分に存在するかでその値は変わります。

分極とは正と負に電荷が分かれることを言います。なので、過分極とはより正と負に分かれるという意味で、脱分極とは0 mVに近づくことで分かれている正と負が消滅しあって、分極から脱するという意味だと考えると覚えやすいと思います。

そして、神経細胞が刺激を受けて膜電位が変化して脱分極して0 mVに近づいたとき、閾値と呼ばれる値を膜電位が超えると活動電位が発生します。活動電位の形はたいてい図5に描かれた形で観測されます。

活動電位が発生すると、前回の図3で見たように樹状突起から軸索の末端にまで活動電位が伝えられます。以降の話に出てこないので、覚えなくてもいいですけれど、活動電位が神経細胞内を伝わることを伝導と呼びます。


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まとめ

  • 神経細胞にかかわらず細胞は細胞の外と中を隔てている膜(細胞膜)に電気を持っている。
  • 何も外部から刺激がないときに取る値の膜電位を静止膜電位と呼ぶ。
  • それぞれより負になることを過分極、0 mVに近づくことを脱分極と呼ぶ。
  • 閾値と呼ばれる値を膜電位が超えると活動電位が発生する。

参考文献

  • カンデル神経科学

自己紹介

あっきー

大学4年間で1,000冊読了。このブログでは、心理学、生き物などのオススメ本について紹介していきます。

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